UX Tokyo Jam 2014 #uxtokyo

UX Japan Forum 2014 #uxjapan に引き続き、7/26 (土) に UX Tokyo Jam 2014 #uxtokyo に参加してきました。東京開催で比較的大きなイベントでしたので、申し込みもすぐに完売したほどです。同僚が参加できなくなったため、急遽代理で参加することができました。

オープニング・キーノート

オープニング・キーノートは、UX Tokyo前田さんでテーマは「UX 0-1-100」という本イベントの構成にもなっているUXをいくつかの視点で分解するお話をしていただきました。

  • UX=0 社会をどうしたらいいのか (哲学・ビジョン)
  • UX=0→1 価値を創造するには (オリジナリティ)
  • UX=1→100 より大きなインパクトをうむには (スケーラビリティ)

そして「デジタルシフト」と「顧客側へのパワーシフト」についての背景を考察したうえで、UXデザインにおける設計対象が、単なるUIからカスタマージャーニー (ユーザー体験)、そしてビジネスシステムにシフトしている点を強調されました。

ビジネスシステム、つまりユーザー体験に対応する組織デザインをしていくためには、強力なリーダーシップやマネジメント力が求められるというメッセージは、経営層だけではなく細かい役割の中にも求められてくるように思いました。

UXデザインのためのマテリアリズム

以降は、パラレルセッションとなっているため参加した方しかメモれていないのですが、参加したのは「UXデザインのためのマテリアリズム」というタイトルで、編集者の江口さんとBEENOSの山本さんのトークショーでした。

マテリアリズム」とは唯物論(対義語は観念論/イデアリズム)のことで、このセッションではUXデザインを人間性から考えるのか、派生されたモノ (Webなど) ありきで考えるのかという話だったように思います。

たとえば Web は Google で検索すればすぐに答えが見つかるなど、答えに直結していたり、人間が生活をしていくうえで非常に合理的にできている反面、人間的な側面 (感情やゆとりなど) を置き去りにしているのではないか、といった問題提起が話の根底にあったと思います。

イタリア発の「Slow Web」という提唱は非常に人間的で、待ったなしのネット社会に反する生き方を指しているようでした。参考書籍として「ぼくはお金を使わずに生きることにした」を上げられていました。

また、UXデザインとしてとらえた場合、Web を作ることを前提に進めるのではなく、なにが必要なのかを見極めてから取り組むことで、結果 Web を作ることではなく QOL (Quality of Life) を満たす取り組みを目指すことのほうが大切だとお話もされていました。ボクの経験でも課題を見極めた結果、Web サイトの刷新は必要ない場合があると感じることが多々あるのでよく理解できました。

途中で変わる例として、江口さんからは「Moff – ウェアラブルなおもちゃ」の開発背景としても、当初想定していた親子のコミュニケーションを違ったカタチで実現したことをお話いただきました。このデバイスは SXSW 2013 のトレードショーでも人気だったと聞いています。

あと、個人的に興味を持ったのが「直観力」の話です。A/Bテストやデータ分析だけで判断するのではなく、そこには全体最適をとらえて考えることが重要だという話はだいぶ以前にも機械的か人間的かといった話題を聞いたことがあったのでその話とオーバーラップしました。ボク自身もこうした捉え方をする習慣を持つよう努めているところがあります。

また、その話とリンクするように「社会的意義があるか」という言葉もボクの耳には残りました。ただ、直観力を持つことと社会的意義がどうも交わらなかったので個人的には違和感がありました。この点は直接山本さんともメッセでやりとりさせていただきました。

UX Study としての Feasibility Study

次は、スタートアップとしてのUXとして、新明さんから「ココナラ」の開発背景をお話いただきました。2年前の立ち上げから現在に至るまでの流れをご紹介いただいたので、とても参考になりました。

ココナラ」とは、パーソナルな個人の相談ごとを、個人の知識・経験・スキルを低価格に提供して解決するマイクロサービスプラットフォームで、現在数万人の利用者がいるそうです。まさに、Two-Sided Marketplaces ということで、Buyer と Seller の両方を考えなければいけないビジネスモデルです。

UXデザインの3階層(サービスデザイン/アクティビティデザイン/インタラクションデザイン)で 取り組みを簡単にご説明いただき、サービスデザインを「事業の Feasibility Study」、アクティビティデザイン/インタラクションデザインを「UX の Feasibility Study」として、取り組まれた内容についてお話いただきました。

Seller や Buyer それぞれの仮説の検証方法をご説明いただき、ユーザー自身にカスタマージャーニーを作成してもらい感情曲線を書いてもらうなど、実際に取り組まれた方法をご紹介いただきました。その中で、UXタイムスパン (期間) を持ち出し、予期的 UX を満たすことの難しさと解決策として Vision ドリブンなメッセージを検討したという話も記憶に残りました。

最後に、音声入力や自分が会えないユーザーをターゲットに設定したことでの失敗談をお話いただきました。実際に取り組んだことをこれほど長時間にわたって解説していただいたことはなかったので、とても参考になりました。

UXから「生きたUX」へ

「ペルちゃん」こと大隈さんから「Act,Act, living present. (行動せよ、行動せよ、生ける現在に!)」という Henry Wadsworth Longfellow の言葉からはじまり、IDEO に学ぶ HX Prototype のお話をご紹介いただきました。そして「アウトプットのない学びは、鼻くそや~!」という彼の名言にあるとおり、このセッションでは課題をもとに実際にアウトプットをするグループワークショップを実施しました。

HX Prototype」とは、ヒューマンエクスペリエンス (人間体験) +プロトタイプ (試し、簡単な失敗) のワークショップだそうで、以下のお題をいただきました。

  • セブンイレブンのロゴを書いてください。
  • 来年、UX Tokyo として発信したいコトを書いてください。

ロゴはさすがに細部を覚えていなかったです。こんなに (なぞ) 見ているのに、人間の意識はまったくアテにならないことを痛感しました。

次は、来年自分が UX Tokyo で世界に向けて発信するとしたら何を発信するか、というテーマで各自で書いてまとめるワークをしました。自分が書いたものには、「日本文化」や「機械に負けない人間力」そして「デザイナーの向上」や「スキルアップ」などを書いたと思います。グループには、ゲーム開発に携わっている方から猫好きな方など、さまざまな意見が飛び交いました。最後にグループでは、そうしたさまざまな接点を持てる会にできるといいのでは、ということで「YATAI (屋台)」というのを発案しました。

今回このイベントに参加したのは、あくまで「UX」に引っかかる人たちなので、異業種や他業種、それこそ一般の人にも参加できる会にできるといいと考えました。そしてこのセッションにもあったように、参加する人が皆その場でアウトプットできる場としてグループごとに屋台を持ち、即席UXデザインではないですが、Fabcafe 屋台っぽいのがあると面白いという話に行き着きました。

思いのほか発熱したワークショップだったので、時間も押してしまい、ほかのグループの発表を聞けなかったのが本当に残念でした。

ほかのセッション

Empathy in UX Design

グリーの村越さんと元ロフトワークの水野さんで、モデレーターがコンセントの坂田くんというよく顔を合わせる方々のセッション。内容は聞けなかったのですが、各人の経験から実践に近い話をされたのではないかと思います。

Experience Design Out of Screen:これからのエクスペリンスデザイナーの生きる道

今年、会社を立ち上げたアトモスの児玉さんのセッション。IoT などプロダクトデザインのほうにも携わっていて、さまざまなことにチャレンジしている児玉さんとは懇親会でいろいろとお話できました。セッション中にライトニングトークも実施されたようで、村越さんも参加されたようです。

UX戦略を考えるための本質的ユーザー理解

インフォバーン井登さんのセッションは、ペルソナ開発について深堀りしたお話だったようで、こちらも聞きたかったセッションだっただけに聞けなかったのは本当に残念でした。そして懇親会でははじめてご挨拶することができ、同じ関西出身ということで今後なにかで一緒にできればと思いました。

クロージング・キーノート

最後は、コンセントの長谷川さんから「The Nature of UX」というタイトルで「UXの本質」についてお話されました。まず「UI/UX」表記は誤りである点を強調されました。

  • 「UX」を結果として捉えた場合、そのための手段として「UI」がある

電車の券売機を例に、使い方を補助するような張り紙は、UX観点で見た場合それほど気にならない、つまりUXで捉えた場合UIが及ぼす影響はそれほど大きくない点をお話されました。さらに、UX観点では目的地に向かうことであり、その手段として発券がある点をご説明いただきました。

参考書籍もいろいろとご紹介いただきました。

次に「時代が追いついた」テーマでは、米アップルの UX Architect Labo の設立背景から、米アマゾンのジェフベゾスCEOのインタビュー記事を紹介いただきました。「キンドル・ファイアがただのデバイスではなく、サービスだからです」 とCEOが言える時代。競争優位性の年表としても「製造の時代→流通の時代→情報の時代」と変わり、今は「顧客の時代」と言われているようです。

会社が失敗するのは、経営がまずかったからではなく、やるべきだと従来言われてきたことをきちんとやったからである」という従来からあるマーケティングの見直しと、グッズ・ドミナント・ロジックからサービス・ドミナント・ロジックへの変化についてもご説明いただきました。そうした時代の変化に合わせたビジネスシステムは、これまで別個に設けていたUX組織も、最近では事業にインクルードするカタチに変わってきたそうです。

  • UXデザイナが未来をつくる

このイベントの頭から参加していたことで、前田さんのオープニングキーノートの内容が再び頭に蘇りました。UIからユーザー体験、そしてビジネスモデルの変革に深く関与しているわたしたちは、これまでにない転機に差し掛かっている。そう考えれば考えるほど、長谷川さんの最後のスライド「UXデザイナが未来をつくる」は考え深いものがあります。

懇親会

その後の懇親会では、児玉さんや井登さんらと会話することができ充実した一日になりました。この写真は井登さんの「THETA」で撮影した写真です。

長時間でしたが、今回このイベントに参加できたことで、いろいろな方のお考えをお聞きすることができ、また自分の中での考えをめぐらす機会に出会えたことをうれしく思います。ありがとうございました。そしてお疲れさまでした。

参加者や登壇者のコメントやブログもご覧ください。

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