スマデバ戦略とジャーニーマップ #WCCStudy

10月29日 (水) に、ネットイヤーグループメンバーズIMJの合同勉強会「Web Creators Circle」の第三回を開催しました。今回は、場所をIMJで開催したため同社の「すまのべ!」のご協力のもと、最新デバイスの体験もすることができ、とても活気あるイベントにすることができました。

第三回のテーマは「スマートデバイスで描く理想のマーケティング戦略」として、ジャーニーマップを使ったグループワークを実施しました。ワークの概要は後述するとして、ワークショップを進めていく中で気づいたことを書いておこうと思います。

今回は、「UXD/HCD ワイワイCAFE」の太田さんらもファシリテーターとして参加いただいたので、そういった点でもかなり充実していました。

グループ発表

ジャーニーマップを使ったワークショップは個人でもいくつか経験したことがあるので、今後の糧になるよい機会になりました。一番気になったのは、感情曲線からはじめるジャーニーマップの作成と進め方について、次の課題があると思いました。

  • 感情曲線から出発すると、全体の構成が見つけられないまま描くことになる
  • モチベーションの度合いが相対評価になると、偏り(狂い)が生じる

全体構成を見つける

感情曲線を使った流れ全体を紙面に収めることを考えると、全体の構成をはじめに見つけてから描き始めないと紙面が余るか紙面に収まりきらない可能性が高いです。ちょうどいいくらいに収まっているものを見ると、頭の中で構成を考えているとしか思えません。とするならば、やはりはじめに構成を決めておくべきだと思いました。

ここで言う構成とは「起承転結」のことですが、今回のジャーニーマップを作成するうえではサービスにまつわる「利用前・利用中・利用後」といったステージのことを指します。「ああして、こうして…」とトピックポイントを単純につなげていくと、まず紙面には収まりません。もちろん紙面の都合を考慮せずにする方法もありますが。

また、トピックポイントをそのステージに合わせてプロットすることも課題を見つけるうえでは重要だと感じました。ステージとトピックポイントがズレてしまうと、正しくソリューションを提案できなくなります。

モチベーションの基準線を描く

次に、モチベーションが相対評価になると「この時よりはモチベーションが上がった」という見方をするので、それまでに描いた度合いを大きく超えるもしくは下回ることが考えられます。そうすると、どうしても後半に行けば行くほどその影響を大きく受け、実際には絶対評価(その時のモチベーション)であるはずの体験が相対評価として描くことになります。

たとえば、基準線(ゼロ地点)から上半分や下半分にだけ曲線が偏っているのはそのせいです。わたしたちの記憶で考えても、常に絶対評価であるはずで、相対評価になるのはもっとも記憶に残った事や類似する経験をしたときだけです。「あの時」と「今」を常に比較できることは難しいと思いますので、基準線がないものにはそうした狂いを生じてしまう可能性があります。

紙面に収まらない場合

全体構成を意識した場合

基準線を意識した場合

グループでのディスカッション

グループワークでは、グループごとに仮想クライアントをくじ引きでを決め、グループ内に一人ユーザーを設定して進めました。ユーザーからヒアリングしてジャーニーマップを作成し、見つけた課題からスマデバを使ったソリューションをグループで企画するという感じです。

参加したグループでは、仮想クライアントを「クリスピー・クリーム・ドーナツ(以下「ドーナツ屋」)」で、ユーザーを「すまのべ!」の加茂さんに担当していただきました。彼女の記憶を遡り、そのときの状況をジャーニーマップに書き写していきました。個性的な彼女の体験を聞くだけでも楽しく、とても有意義なディスカッションでした。

ポストイット

課題は、映画に行く目的でドーナツ屋(店舗)に寄るという目的が別にある点です。「ついで買い」などと呼ぶ購買行動にもよく似た「ついで食い (なぞ)」です。そうすると必然的に、映画チケットの購入時からドーナツ屋での体験はスタートしています。この点を突き詰めて考えていくと、シネコンなどでの複合施設ではそうした連携施策は着目すべきだと考えました。

また、今回のユーザーは「いっしょに映画を観る友達を待っている空き時間に、仕方なくドーナツ屋で待つ」という設定でしたので、空き時間を友達とシェアするという意味で、「待ち割」という割引サービスを考えました。この割引サービスを、映画予約アプリなどでドーナツ屋と連携して提供できれば、複合施設ならではのソリューションが提供できると考えました。

発表後、「ドーナツ屋ならではのソリューションはないのですか?」と聞かれましたが、今回は目的が別にあったので(ついで食いだったので)考えていなかったと話しましたが、さらにドーナツ屋ならではのソリューションが考えられればよかったなと思いました。

ほかのグループの発表も面白いものもありました。マクドでの深夜退店をやさしく案内するソリューションや、スタバで傘を借りれるスマート傘など。皆さん真剣にディスカッションを進めていく中で、ポストイットを多く利用して活気のあるディスカッションになりました。

最新デバイスの体験

IMJの「すまのべ! (スマートイノベーションの略)」には、「Kinect」でのフルーツキャッチゲームをはじめ、「Google Glass」やエプソンの「MOVERIO」、VRヘッドセットで話題の「Oculus Rift (オキュラス・リフト)」が体験できます。ボクも興味本位で「Google Glass」と「Oculus Rift」を体験させていただきました。

「Oculus Rift」では、宇宙探索とジェットコースターのようなデモを体験させてもらったのですが、本当にその空間にいるような錯覚と重力を感じるような体験に驚きました。まさしく異次元空間でしたので、まだ体験されていない方はぜひIMJの「すまのべ!」で体験してみるといいと思います。

Oculus Rift 体験

今回も写真は、メンバーズの高橋さんによるものです。ありがとうございます。

ほかの参加者のコメントやブログもご覧ください。

第三回を終えて

今年の5月くらいに企画をはじめたこの合同勉強会も今回で第三回目を終了しました。

はじめはメンバーズとネットイヤーグループの個別の勉強会で検討していましたが、そこにIMJも加わり同業三社による合同勉強会にすることができました。場所も回ごとに変えたため、これで三社(メンバーズの晴海トリトン、ネットイヤーグループの東銀座、IMJの青葉台)を回ったことになります。

次は、メンバーズでと検討を進めているところです。忘年会や新年会も企画しています。興味ある方はぜひ次回にご参加ください。


UI/UX Study w/Standard Inc.

UI/UX Study 全体写真

10/21 (火)、ネットイヤーグループの UI/UX 勉強会に、STANDARD Inc鈴木健一さん鈴木智大さんをお招きして講師をお願いしました。STANDARD Inc は、FICC からスピンアウトした鈴木健一さんが設立した会社で、今話題の「SmartNews」アプリの UI 設計などにも関わった実績のある会社です。

彼らとは、ブログ記事「情報がないことを伝える UI デザイン」を読んだことがキッカケで、直接コンタクトをとったことに始まります。

そのブログを書かれた鈴木智大さんのほうからは「利用中の体験とUIの間を繋ぐブリッジビルダー」というタイトルで「UI Flows」というツールについてお話いただきました。UI Flows の記事を日本語訳した記事「UI のフローをデザインするための簡易記法」も発見。

画面遷移図というと、どうしても画面(ボックス)どうしを線でつなげた図を思い浮かべますが、ここで紹介された手法では「ユーザーが見るもの/ユーザーがすること」という具合に、画面に紐づくアクションをいっしょに書くスタイルです。これにより単に画面を線でつなぐときよりも、どうするとこの画面にたどり着くのかが明示しやすくなります。

UI Flows 表記例

ただし、つながる単位が画面ではなくアクションになるため、1 画面に対するアクションの数が増えれば増えるほど、ブランチが多くなる課題を持っています。モバイルアプリのように目的や機能が少ない場合には適用しやすい反面、さまざまな目的が介在する業務アプリや Web サイトの場合には適用しづらいかなという印象を持ちました。

また「なぜその画面が必要か」はこのツールでは見つけられません。あくまでも「シナリオ > 画面遷移 > ワイヤーフレーム」のうちの「画面遷移」を取り出しているため、その前提となるシナリオはここでは触れていないことにも注意が必要です。というのも、ボクの経験では、画面に紐づくアクションの前提となるユーザー行動から整理していったほうが理解しやすいと思いました。たとえば、ユーザー行動を「アクティビティ」として、UI Flows と合体して考えると、次のようなレイヤーで考えることができます。

Activity とUI Flows を合体した例

ここまで一気通貫で可視化ができれば、何のためにその画面が必要で、どういうアクションができるのかが一目瞭然な気がします。そしてこれはジャーニー化の原型として見ることもできるので、見え方でいえばこちらのほうが自然かなと思いました。

UI Flows は、画面を基準に考えるアプローチではありますが、実際にはアクティビティに大きく影響され、画面単位ではなくアクション単位に深堀りするツールだと言えます。そしてその実態は、画面内に配置する要素の目的とその先にどういう展開が待ち構えているのか指し示すことができるものと理解しました。

鈴木健一さんのほうからは「アプリの UI 設計をする上で、理解しておきたいコンポーネントの種類と用法」をお話いただきました。PCとモバイルの違いを例に、アプリ設計の指針となるガイドラインをもとにご紹介いただきました。個人的にもそれぞれのガイドラインの存在は知っているものの、すべてを把握したうえで人に説明することはできないので、とても参考になりました。

UI パターンやナビゲーションパターン、よく使われるコンポーネントについて、それぞれの概要と実例、使用するうえでのメリット・デメリットをご説明いただきました。リハではこの説明に 2 時間くらいかかったそうで、非常に大作です。これらの UI パターンやコンポーネントを理解しておくことで、目的に合わせた UI をイメージしやすくなります。また、UI Flows と組み合わせることにより、アクションとコンポーネントとを同時に検討でき、より忠実度の高いイメージを共有するのに役立ちます。

アプリ UI の主要な画面パターン

  • 導入画面(スプラッシュ/ウォークスルー/コーチマーク/エンプティステート)
  • トップ画面(ポータル型/タイムライン型/ストア型)
  • 一覧画面(検索結果/ギャラリー/お知らせ)
  • 詳細画面(ビューア/記事/マップ/プロダクト)
  • 入力・操作画面(サインアップ/投稿/カメラ撮影/設定)

操作の起点となるナビゲーションのメリット・デメリット

  • ドリルダウン型(絞り込み、構造がシンプルな場合に有効)
  • タブ型(すぐに平行移動する場合に有効)
  • スプリングボード型(全体像を訴求する場合に有効)
  • ドロワー型(コンテンツに集中してもらう場合に有効)

よく使われるコンポーネント

  • セグメンテッドコントロール(複数の項目を 1 グループにする)
  • リフレッシュコントロール(垂直の表示リストの更新をする)
  • カルーセルパネル(高さを固定して複数表示する)
  • モーダルメッセージ(強制的に表示する)

最後に、次のステップとしてのビジュアルデザインへの取り組みや、プロトタイピングなどのご紹介をしていただきました。プロトタイピングツールは、FlintoInVisionPrott などを例に、実機での検証や試作から改善のスピードアップを重要視する点をお話いただきました。

今回の勉強会は、アプリのUIというのが前提にはなりますが、人とシステムとの関わり方のデザインについて改めて考えさせられる機会になりました。個人的にもスマホのデザインパターンは興味がありましたが、それらをどういった目的に適用していくかという点では、今回の内容は非常にフィットしているなと感じました。

また、こうした勉強会を社内で実施したことで質疑応答にもみられたように、UXとUIとの理解と自分たちの業務との関係性を改めて理解していくことに役立ったと思います。またこうした専門的に掘り下げる勉強会も継続してできればと思います。

STANDARD Inc のブログ「REFRECTION」にも当日のレポートを掲載いただきましたので、詳細はそちらもご覧ください。

ちなみに、この記事の写真もすべて STANDARD Inc の吉竹遼さんによるものです(ありがとうございました)

UI/UX Study 終了後の一コマ


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Hypothesis-based Design within UX Design #ux_sapporo

カスタマージャーニーマップを使ったミニワークショップ

9月27日に開催したセミナーイベント「UX-Sapporo x CSS Nite」で登壇してきました。

当日は、CSS Nite in SAPPORO 実行委員でもある李さん(リーグラフィ)と河原さん(さくらインターネット)とでセッションを担当し、司会進行は益子さん(サイバーガーデン)にお願いしました。

イベント背景

今回のイベントは、7月に名古屋で開催された UX Japan Community Meeting #1 で李さんとはじめて会話できたことがキッカケです。ボク自身、小学校低学年のときに北海道(千歳)に在住していたため、共通の知人である益子さんと相談して実現に至りました。北海道での講演がはじめてだったことに加えて、東京に比べて「UX」をテーマにしたイベントがあまりないことを事前にお聞きしていたため、今回のイベントはかなりチャレンジでした。

講演概要

はじめにボクがお話した「仮説で進めるUXデザイン Hypothesis-based Design within UX Design」は、UXやUXデザインについて記事(ブログ)や話を聞く機会は増えたが、実際の業務においてそれほど活用に至っていない方々を対象に、ポイントとなるキーワードから広げて、ケーススタディをご紹介しました。当日のスライドは参加者特典となるため非公開になります。時期を見て別途公開できればと思います。

次の李さんからは「中小企業向けサイトのUX手法」で、小規模サイトを中心にした取り組みの中から、UX手法を用いた改善方法についてお話いただきました。
最後の河原さんからは「インフラ企業で働く フロントエンドエンジニアの挑戦」というタイトルで、よりよいUXデザイン環境を構築するための「文化の醸成 + 手法の導入」についてお話いただきました。

お二人のお話は、サービスデザイン観点で見た場合に、対クライアントへの対応や企業内での組織横断の取り組みについて多くの示唆を得ることができました。

坂本の講演風景

UXにおけるキーファクター

UXデザインをするうえでのキーファクターを次の3としました。まずはプロダクト単体だけではない視点を持つこと、利用してもらう仕掛けと仕組みを考えることがあげられます。次に、時間軸と接点を見ていくこと、最後に表現におけるパターンを知ることです。

この3つを自らの思考にインストールすることで、取り組むべき問題解決に対処することができます。

サービスデザイン
プロダクト単体だけではなく、プロダクトを利用してもらうための仕掛けや仕組みを考える
タイムライン
時間軸を見極めることで、利用者との接点を俯瞰する
デザインパターン
さまざまなデザインパターンを知ることで表現の幅が広がる

カスタマージャーニーマップ(ミニワーク)

最後に行った個人のアクティビティをジャーニーマップにするワークショップでは、それまで黙っていた参加者も積極的にディスカッションしていただくことができ、非常に有意義な時間にすることができました。次はワークショップだけでもいいかも知れないなと思いました。

ワークショップは、ユーザー行動を動画で見てもらい、各アクションにおける課題を見つけ、解決方法をディスカッションするというものです。日頃、自分の業務や対象ウェブサイトでしか考えられない枠組みを取っ払ってもらうことで、ユーザー行動における課題を発見し解決案(ソリューション)を考えてもらうことができました。

カスタマージャーニーマップ

仮説とカスタマージャーニーマップ

今回の「仮説」は、カスタマージャーニーマップを使うことで、自分の担当領域以外のことでもユーザー行動の課題となることであれば発見することができるというもので、どのように顧客がサービスと触れ合うのかを仮説立てるツールとしてご紹介しました。

Googleで検索して出てくるカスタマージャーニーマップは、コンサルティングファームのケーススタディとして後日まとめたポスター的なものであったり、手書きのワークショップで付箋をマッピングしたものがほとんどです。しかし、手元で起こる実業務においてはそうしたカタチにはできない場合が往々にしてあります。

今回伝えたかったことは、そうしたカタチにこだわらず、顧客とサービスとの接点を俯瞰する方法を知り、そのうえで課題解決をするという思考を自らにインストールしていただきたかったのが狙いでした。違う場所やなにかの議論の延長で、参加者が今回のような思考で取り組み、実業務に反映していただけることを祈ります。参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

スピーカー陣

参加者や登壇者のコメントやブログもご覧ください。


HCD-Net Usability Evaluation #6 Seminar

レゴでHCD-Net

8月23日、HCD-Net (人間中心設計機構) 主催のワークショップセミナー「ユーザビリティ評価」の第6回に登壇しました。今回は、グリー村越さんと二人で担当することにしました。午前中に講義をし、午後にワークショップという流れでした。

全7回のうちすでに五回は終了しているため、どういう講義内容がいいのかはじめ悩んでおりましたが、これまでの講義・演習資料などを拝見させてただいたところ、ユーザビリティ評価についての知識からテストや実査までひととおり終わっているので、UXデザイン寄りのテーマからボクのほうでお話をし、ゲームデザインの現場で日々テストに取り組んでいる村越さんのお話をすることにしました。

ユーザビリティ評価の課題

ユーザビリティ」という言葉は、10年以上も前から Web のビジネスで使われており、Google Trends での推移を見てみると、2009 年ごろから下降気味になっています。2009年ごろは「ユーザビリティ評価ランキング」というのが多かった時期というのもあり、これを改めて振り返ってみようという構成にしました。

最近では「ユーザビリティ」より「UX」という言葉のほうがよく聞くようになったことと、Webサイトのユーザビリティ評価ではなくWebブランド調査の一貫でWebサイトが対象に含まれるという背景を話しました。つまり、プロダクトにおける価値からマーケティングにおける価値の尺度になってきているのだと思います。

また、デバイスごとのユーザビリティ上の課題としては、ニールセンの「Tablet Usability」でも明らかなように、ジェスチャーの課題 (Gesture Problems) やタブレットデバイス上の操作に関する課題をお話しました。そうしたユーザビリティを考慮し向上させるには、どのようにすればいいのか。その解決策としてUXデザインをお話しました。

ちゃちゃきさんのブログ「デザインするレイヤーの話とUXDの話」をご紹介し、UXデザインの3階層とからめてお話ししています。UXデザインの3階層とは、サービスデザイン・アクティビティデザイン・インタラクションデザインとで3つの階層で整理した概念図です。あと、保坂さんブログからUXタイムラインとUXタイムスパンを合成した時間軸と取り組みとのマッチングをご紹介しました。モバイルの利用者をとらえるためには、ユーザーの利用状況の理解と時間軸でのインタラクションが重要といえます。

UXデザインの3階層

ケーススタディとしては某プロジェクトを紹介し、インタビューを経て精緻化したペルソナとシナリオ開発のUX評価と、シナリオに沿った動きをプロトタイピングでのテストをご紹介しました。社外秘になるため、この部分は公開スライドからは省いています。

最後に、ユーザビリティからUXへの変遷として象徴的なエピソードとして、2012年にそれまで「UPA: Usability Professionals Association」としていた協会名を「UXPA: User Experience Professionals Association」に改名したエピソードをお話しました。

ゲーム開発におけるユーザーテストの取り組みについて

村越さんの講義は「User Testing for Mobile Games.」というもので、グリーの社内での取り組みをご紹介いただきました。残念ながら社外秘の情報満載のため公開はされていませんが、いくつか個人メモからポイントを整理してみます。結果として、現場のコミュニケーションが促進され、議論の場としても機能しているそうです。

  • ユーザテストを行う環境づくりは自前で作る「DIY」
  • 運営フローの仕組化、数日のうちにテスト実施・課題整理・共有までを行う
  • チェックポイントの仕組化、テスト要件の定義を行う
  • 意識共有、認識共有、課題の再認識が行える

個人的に一番記憶に残ったのは、ゲームのユーザーテストのタスク設計のポイントに「タスクが目的ありきではない」というものでした。

たとえば、ドラクエ(ロールプレイングゲーム)をしているときは、プレイヤー(勇者)にタスクを与えるのは王様やエピソード上の依頼(クエスト)になります。したがって、極論を言うとプレイヤーが自分の目的でゲームをしているという捉え方が難しくなります。そうすると、ジャーニーマップに体験をマッピングしようとした場合、時間軸としてのステージやストーリーは、プレイヤーのジャーニーよりもゲーム上のストーリーのほうが主になってきます。プレイヤー(勇者)は王様からクエストをもらい、エピソード上のイベントに参加し、クエストを達成すれば終了という具合に。

このあたりはボクもたいへん興味深く聞いていました。もう少し突っ込んだ話をどこかで聞ければと思います。ゲームに関しては最近読んだ本に「Game Development Essentials: Game Interface Design」という本もがあります。こちらはゲームインターフェースデザインについて深堀りした本です。

また、レベル(バランス)に関して慎重にデザインしている点も興味深かったです。UI・世界観・ゲームモデルといった各レイヤーごとの課題と、その効果・効率・満足度との関係性について詳しく聞くことができました。とくに「競争と対立」という言葉は、ふだん企業のサービス開発に関わっている自分からすると馴染みが薄い言葉ですが、ソーシャルメディアでのエンゲージメントにも応用できる概念だと思いました。

最後に、「興味あること」としてご紹介いただいた脳波を使ったシミュレーションは、先日参加できなかった UX Tokyo Jam 2014 のセッションでもお話いただいたことらしく関心を持ちました。

User Testing for Mobile Games
村越さんの講義

ワークショップ

午後からのワークショップは、見学者も合わせて10チームで行いました。ユーザビリティ評価を実践するうえでのUXデザインのアプローチというテーマで、ペルソナ開発・ジャーニーマッピング・プロトタイピングを実施しました。はじめに「これまでで最悪だったアプリ」をアイスブレイクで紹介し合い、その中から対象アプリを選定して決めました。

ペルソナはその最悪だった発言者にあたるため、チーム内でのインタビューを行いペルソナ化を進めていきました。ペルソナは、顔(イラスト)・プロフィール・利用における背景(コンテクスト)で整理していき、各自が付箋でプロットしていくカタチをとりました。

ジャーニーマッピングは、具体的にどういう行動の中でどのように感じたのかを付箋でマッピングしていきました。横軸に、利用前・利用中・利用後として、縦軸は、行動・感情のみとして感情曲線は省きました。その中からフォーカスする課題を決めて、プロトタイピングをスケッチしていきます。ある程度できあがった段階で、一次フィードバックとして他チームの方が評価し、その評価をもとにチーム内にフィードバックをしてブラッシュアップしていきました。

最終的には、以下のような改善を加えたアプリをプロトタイピングで発表していただきました。

  • メッセンジャーアプリ: 通知と終了の課題を表現方法の提案で解決する
  • 乗り換えアプリ: 何度も調べ直す課題を経路の保持と再検索のしやすさで解決する
  • 家計簿アプリ: 品目選定や表現の課題を、グラフの豊富さや品目の充実で解決する
  • メール同期アプリ: 同期やUIの課題を、ステータスの表現とデザインで解決する
  • 外食アプリ: 繰り返し利用の課題を、条件の固定や余計なステップ減で解決する
  • 酒造ゲームアプリ: 操作性の課題を、チュートリアルとUIのフォーカスで解決する
  • 音楽ゲームアプリ: チュートリアルとローディングの課題を、見直し解決する
  • ストレージアプリ: 利用プロセスとボタンの課題を、プロセスとUI改善で解決する

ゲームについては午前中の村越さんの講義とも重なり、チュートリアルや画面上の課題が具体的に議論できた点がよかったです。ただ、本来の価値と、ステップ減などで得る特典(価値)とのバランスが重要な点は目からウロコで、エサとしての特典目当ての利用者に対しては一時的には有効ですが、長期的なブランド価値にはつながりにくいので、その点はやはりバランスを考える必要がありそうです。

まとめ

今回「ユーザビリティ評価」をテーマにしたセミナーイベントでしたが、これまでの五回分の内容とは異なり、UXデザインからの「俯瞰」とゲームのユーザテストにおける「実践」という2点において、かなり内容の濃い一日になったのではないかと思います。

ただ、対象アプリが既存のものがある状態でしたので、どのチームも比較的実現できそうな改善案にとどまっていた印象でした。やはり前提条件に既存の延長とさらなるアイデアを議論してもらったほうが有意義だったかなと思いました。そのあたりは次回にでも深めることができればと思います。

懇親会では、さまざな方とお話しすることができ、4月に東北セミボラでもご一緒した上平さんも合流して、最後までUX居酒屋 (どこ) で楽しむことができました。

また、11月にはサービスデザインのワークショップでも去年に続き浅野先生をヘルプする立場で参加すると思いますので、参加される方はぜひよろしくお願いします。


これからの運用スタイル #WCCStudy

8月27日 (水) 前回いろいろなところで反響のあった合同勉強会「Web Creators Circle」の第二回を開催しました。今回は、場所をネットイヤーグループにして、メンバーズに加え IMJ からも10名ずつ参加し総勢30名強の勉強会となりました。

第二回目のテーマは「運用」です。現状の運用スタイルとその課題、これから求められるであろう理想の運用についてディスカッションをしました。今回もグループごとに分かれてディスカッションをし最後に発表という流れで行いました。

ディスカッション風景

各グループの発表内容はここでは書ききれないので、いくつか気になった点をピックアップしてみます。

運用で求められることとは?

まず、運用とは「改善・ルール化」のことを指すことであり、ルール化のためのガイドラインコミュニケーションが重要とする点は全グループ共通でした。一方で、ユーザー満足度向上のためには、クライアントのビジネス視点を持ち、トータルにコミットしていく姿勢が求められるという点も全グループ共通の理解でした。

  • 運用とは「改善・ルール化」のことを指す
  • クライアントの視点を持ち、トータルにコミットしていく姿勢が理想である

また、そうした運用の姿勢については「プロ意識」を持つことが大切で、クライアントおよびエンドユーザーの「気づいていない領域」について、一番はじめに気づけるようになることが理想だという意見がありました。ここでいうプロとは、クライアントのビジネスのプロではなく、デジタル領域のプロを指します。先見性や市場動向などをふまえて提言できることを指しています。逆に言うと、そうした相談ができるパートナーであることが求められます。

  • プロ意識を持つこと(デジタル領域のプロフェッショナルであること)
  • 相談できるパートナーであること

ただし、そうした先見性を持つことと対照的にリスクを常に考える傾向もあります。春菊さん (だれ) の説明にありましたが、リスクを考えると、いわゆる製造業でいう「QCD」が影響を受けます。効率化やマニュアルなどのシステム化によりQCDを上げることができても、融通が効かなかったり柔軟性に欠けてしまえば、すぐに運用会社のリプレイスも余儀なくされます。したがって、QCDに加えて先見性や柔軟性などの「付加価値」をセットでとらえる必要があります。

  • クライアント視点とは、QCDとRのバランスを考慮すること
  • リスクから、付加価値に変えること

QCD - R2V

興味深かったのが、社内の運用メンバーに対しての価値について話し合われたグループがあったことです。どうしても社内の運用メンバーのモチベーション維持は課題になります。クライアントの理想を実現するためには長期的な体制を維持できることが組織としては重要ですが、クライアンの姿勢を社内の運用メンバーにもきちんと伝播できる体制やしくみがあることもまた大切なことです。

  • 運用メンバーのモチベーション維持が課題
  • クライアントの姿勢や思いを、運用メンバーに伝播する体制やしくみが必要

運用業務の「安心・安全」をベースにする考え方に加えて、突き詰めていくと運用とは「誰がやっているか」によるものだという意見がありました。結局は、対応するのは人であり、クライアントと相談できる関係を築けるのもまた人ということになります。つまり、そうした優秀な人材をいかに増やしていくかということが大きな課題につながり、そこで大切なのは「教育」になります。

  • 運用業務とは「人」が関係することである
  • 優秀な人材を増やしていくために「教育」が必要となる

発表と講評

運用とは言わない

ボクが参加したグループでは、運用には、忍耐・飽きる・地味といったネガティブなイメージがあり、仕事内容は主に更新業務が多いためルーチンやマニュアル化を必要とするという意見がありました。一方で、クライアントの要望に応えようとするとすぐに提案を求められることが多いらしいです。提案とはつまり企画の提案だと思いますが、この企画を含むか含まないかで運用との線引きができそうです。運用費用と一口に言ってしまう場合には、企画を含まないことが多いようです。

運用」の対象とは Web などのプロダクトを指すことが多いと思いますが、この場合の「企画」とはいわゆるマーケティング企画に近い部分だと言えます。ただし、運用費用にはそのマーケティング企画費を含むことはないという矛盾があります。

そこで、「運用とは言わないほうがいいのではないか?」という話になりました。「運用」と言ってしまうことで、ネガティブなイメージがつきまとい、メンバーのモチベーションが上がりにくかったり、費用に含まれていないいろいろな相談をしたほうがよかったりするのであれば、いっそ「運用」と呼ばず「戦略」とかにしてしまえばいいのではないか。そうすると、そのために必要な体制も作りやすくメンバーの意識も違い、はじめからビジネス視点になりやすく、何のためにするのかという意思統一もしやすくなると思います。

運用」というのは受託側の表現で、クライアント自身にとってみればマーケティングにおけるひとつの業務に過ぎないと言うこともできます。

オープンな運用プラットフォーム

もう一つは、オムニチャネル時代において企業内の組織が縦割りから横断的になろうとしている変化に合わせて、受託側も企業を横断するような運用プラットフォームができないか、といった話がありました。たとえば、参加したグループでは皆 Backlog を使って管理をしていることが多いと聞きました。であれば Backlog を標準ツールにした運用スキームを各社が導入していれば、必然的に運用スキルや効率はあがると考えることもできます。

せっかく3社が集まっているということもあり、そうした運用スキームをオープンなプラットフォームで実現できないか、という話がありました。そのために必要なスキルを教育することや、運用のための検定試験なども考えれそうです。利権の問題があるかも知れませんが、そうした運用のためのプラットフォームを構築するという話はただの理想というより運用の未来像なのかも知れません。

坂本のまとめ

まとめ

クライアントから運用業務をアウトソースされるかされないかが、受託側の今後における課題だと考えています。これまで外部パートナーにアウトソースしていた企業でも、必要なスキルの人材を採用しインハウスで運用を開始する企業も増えてきました。

市場としてクライアントから必要とされるのは単価の安いスーパーマンでありリードしてくれる人、そんな人はいないわけなので、どうしてもチームで対応していく必要があります。ただそのチームとは、受託業者だけのチームではなく、ビジネスに貢献していくためクライアントといっしょになった戦略チームであるべきだと思います。

今回、第二回を実施して、第一回のときよりも参加者の積極性が増した印象を持ちました。ますます同じような業態どうしの課題共有には意義があるように感じます。第三回は IMJ で実施しようと考えていますので、ぜひご期待ください。

Web Creators Circle #2