HCD-Net Usability Evaluation #6 Seminar

レゴでHCD-Net

8月23日、HCD-Net (人間中心設計機構) 主催のワークショップセミナー「ユーザビリティ評価」の第6回に登壇しました。今回は、グリー村越さんと二人で担当することにしました。午前中に講義をし、午後にワークショップという流れでした。

全7回のうちすでに五回は終了しているため、どういう講義内容がいいのかはじめ悩んでおりましたが、これまでの講義・演習資料などを拝見させてただいたところ、ユーザビリティ評価についての知識からテストや実査までひととおり終わっているので、UXデザイン寄りのテーマからボクのほうでお話をし、ゲームデザインの現場で日々テストに取り組んでいる村越さんのお話をすることにしました。

ユーザビリティ評価の課題

ユーザビリティ」という言葉は、10年以上も前から Web のビジネスで使われており、Google Trends での推移を見てみると、2009 年ごろから下降気味になっています。2009年ごろは「ユーザビリティ評価ランキング」というのが多かった時期というのもあり、これを改めて振り返ってみようという構成にしました。

最近では「ユーザビリティ」より「UX」という言葉のほうがよく聞くようになったことと、Webサイトのユーザビリティ評価ではなくWebブランド調査の一貫でWebサイトが対象に含まれるという背景を話しました。つまり、プロダクトにおける価値からマーケティングにおける価値の尺度になってきているのだと思います。

また、デバイスごとのユーザビリティ上の課題としては、ニールセンの「Tablet Usability」でも明らかなように、ジェスチャーの課題 (Gesture Problems) やタブレットデバイス上の操作に関する課題をお話しました。そうしたユーザビリティを考慮し向上させるには、どのようにすればいいのか。その解決策としてUXデザインをお話しました。

ちゃちゃきさんのブログ「デザインするレイヤーの話とUXDの話」をご紹介し、UXデザインの3階層とからめてお話ししています。UXデザインの3階層とは、サービスデザイン・アクティビティデザイン・インタラクションデザインとで3つの階層で整理した概念図です。あと、保坂さんブログからUXタイムラインとUXタイムスパンを合成した時間軸と取り組みとのマッチングをご紹介しました。モバイルの利用者をとらえるためには、ユーザーの利用状況の理解と時間軸でのインタラクションが重要といえます。

UXデザインの3階層

ケーススタディとしては某プロジェクトを紹介し、インタビューを経て精緻化したペルソナとシナリオ開発のUX評価と、シナリオに沿った動きをプロトタイピングでのテストをご紹介しました。社外秘になるため、この部分は公開スライドからは省いています。

最後に、ユーザビリティからUXへの変遷として象徴的なエピソードとして、2012年にそれまで「UPA: Usability Professionals Association」としていた協会名を「UXPA: User Experience Professionals Association」に改名したエピソードをお話しました。

ゲーム開発におけるユーザーテストの取り組みについて

村越さんの講義は「User Testing for Mobile Games.」というもので、グリーの社内での取り組みをご紹介いただきました。残念ながら社外秘の情報満載のため公開はされていませんが、いくつか個人メモからポイントを整理してみます。結果として、現場のコミュニケーションが促進され、議論の場としても機能しているそうです。

  • ユーザテストを行う環境づくりは自前で作る「DIY」
  • 運営フローの仕組化、数日のうちにテスト実施・課題整理・共有までを行う
  • チェックポイントの仕組化、テスト要件の定義を行う
  • 意識共有、認識共有、課題の再認識が行える

個人的に一番記憶に残ったのは、ゲームのユーザーテストのタスク設計のポイントに「タスクが目的ありきではない」というものでした。

たとえば、ドラクエ(ロールプレイングゲーム)をしているときは、プレイヤー(勇者)にタスクを与えるのは王様やエピソード上の依頼(クエスト)になります。したがって、極論を言うとプレイヤーが自分の目的でゲームをしているという捉え方が難しくなります。そうすると、ジャーニーマップに体験をマッピングしようとした場合、時間軸としてのステージやストーリーは、プレイヤーのジャーニーよりもゲーム上のストーリーのほうが主になってきます。プレイヤー(勇者)は王様からクエストをもらい、エピソード上のイベントに参加し、クエストを達成すれば終了という具合に。

このあたりはボクもたいへん興味深く聞いていました。もう少し突っ込んだ話をどこかで聞ければと思います。ゲームに関しては最近読んだ本に「Game Development Essentials: Game Interface Design」という本もがあります。こちらはゲームインターフェースデザインについて深堀りした本です。

また、レベル(バランス)に関して慎重にデザインしている点も興味深かったです。UI・世界観・ゲームモデルといった各レイヤーごとの課題と、その効果・効率・満足度との関係性について詳しく聞くことができました。とくに「競争と対立」という言葉は、ふだん企業のサービス開発に関わっている自分からすると馴染みが薄い言葉ですが、ソーシャルメディアでのエンゲージメントにも応用できる概念だと思いました。

最後に、「興味あること」としてご紹介いただいた脳波を使ったシミュレーションは、先日参加できなかった UX Tokyo Jam 2014 のセッションでもお話いただいたことらしく関心を持ちました。

User Testing for Mobile Games
村越さんの講義

ワークショップ

午後からのワークショップは、見学者も合わせて10チームで行いました。ユーザビリティ評価を実践するうえでのUXデザインのアプローチというテーマで、ペルソナ開発・ジャーニーマッピング・プロトタイピングを実施しました。はじめに「これまでで最悪だったアプリ」をアイスブレイクで紹介し合い、その中から対象アプリを選定して決めました。

ペルソナはその最悪だった発言者にあたるため、チーム内でのインタビューを行いペルソナ化を進めていきました。ペルソナは、顔(イラスト)・プロフィール・利用における背景(コンテクスト)で整理していき、各自が付箋でプロットしていくカタチをとりました。

ジャーニーマッピングは、具体的にどういう行動の中でどのように感じたのかを付箋でマッピングしていきました。横軸に、利用前・利用中・利用後として、縦軸は、行動・感情のみとして感情曲線は省きました。その中からフォーカスする課題を決めて、プロトタイピングをスケッチしていきます。ある程度できあがった段階で、一次フィードバックとして他チームの方が評価し、その評価をもとにチーム内にフィードバックをしてブラッシュアップしていきました。

最終的には、以下のような改善を加えたアプリをプロトタイピングで発表していただきました。

  • メッセンジャーアプリ: 通知と終了の課題を表現方法の提案で解決する
  • 乗り換えアプリ: 何度も調べ直す課題を経路の保持と再検索のしやすさで解決する
  • 家計簿アプリ: 品目選定や表現の課題を、グラフの豊富さや品目の充実で解決する
  • メール同期アプリ: 同期やUIの課題を、ステータスの表現とデザインで解決する
  • 外食アプリ: 繰り返し利用の課題を、条件の固定や余計なステップ減で解決する
  • 酒造ゲームアプリ: 操作性の課題を、チュートリアルとUIのフォーカスで解決する
  • 音楽ゲームアプリ: チュートリアルとローディングの課題を、見直し解決する
  • ストレージアプリ: 利用プロセスとボタンの課題を、プロセスとUI改善で解決する

ゲームについては午前中の村越さんの講義とも重なり、チュートリアルや画面上の課題が具体的に議論できた点がよかったです。ただ、本来の価値と、ステップ減などで得る特典(価値)とのバランスが重要な点は目からウロコで、エサとしての特典目当ての利用者に対しては一時的には有効ですが、長期的なブランド価値にはつながりにくいので、その点はやはりバランスを考える必要がありそうです。

まとめ

今回「ユーザビリティ評価」をテーマにしたセミナーイベントでしたが、これまでの五回分の内容とは異なり、UXデザインからの「俯瞰」とゲームのユーザテストにおける「実践」という2点において、かなり内容の濃い一日になったのではないかと思います。

ただ、対象アプリが既存のものがある状態でしたので、どのチームも比較的実現できそうな改善案にとどまっていた印象でした。やはり前提条件に既存の延長とさらなるアイデアを議論してもらったほうが有意義だったかなと思いました。そのあたりは次回にでも深めることができればと思います。

懇親会では、さまざな方とお話しすることができ、4月に東北セミボラでもご一緒した上平さんも合流して、最後までUX居酒屋 (どこ) で楽しむことができました。

また、11月にはサービスデザインのワークショップでも去年に続き浅野先生をヘルプする立場で参加すると思いますので、参加される方はぜひよろしくお願いします。


これからの運用スタイル #WCCStudy

8月27日 (水) 前回いろいろなところで反響のあった合同勉強会「Web Creators Circle」の第二回を開催しました。今回は、場所をネットイヤーグループにして、メンバーズに加え IMJ からも10名ずつ参加し総勢30名強の勉強会となりました。

第二回目のテーマは「運用」です。現状の運用スタイルとその課題、これから求められるであろう理想の運用についてディスカッションをしました。今回もグループごとに分かれてディスカッションをし最後に発表という流れで行いました。

ディスカッション風景

各グループの発表内容はここでは書ききれないので、いくつか気になった点をピックアップしてみます。

運用で求められることとは?

まず、運用とは「改善・ルール化」のことを指すことであり、ルール化のためのガイドラインコミュニケーションが重要とする点は全グループ共通でした。一方で、ユーザー満足度向上のためには、クライアントのビジネス視点を持ち、トータルにコミットしていく姿勢が求められるという点も全グループ共通の理解でした。

  • 運用とは「改善・ルール化」のことを指す
  • クライアントの視点を持ち、トータルにコミットしていく姿勢が理想である

また、そうした運用の姿勢については「プロ意識」を持つことが大切で、クライアントおよびエンドユーザーの「気づいていない領域」について、一番はじめに気づけるようになることが理想だという意見がありました。ここでいうプロとは、クライアントのビジネスのプロではなく、デジタル領域のプロを指します。先見性や市場動向などをふまえて提言できることを指しています。逆に言うと、そうした相談ができるパートナーであることが求められます。

  • プロ意識を持つこと(デジタル領域のプロフェッショナルであること)
  • 相談できるパートナーであること

ただし、そうした先見性を持つことと対照的にリスクを常に考える傾向もあります。春菊さん (だれ) の説明にありましたが、リスクを考えると、いわゆる製造業でいう「QCD」が影響を受けます。効率化やマニュアルなどのシステム化によりQCDを上げることができても、融通が効かなかったり柔軟性に欠けてしまえば、すぐに運用会社のリプレイスも余儀なくされます。したがって、QCDに加えて先見性や柔軟性などの「付加価値」をセットでとらえる必要があります。

  • クライアント視点とは、QCDとRのバランスを考慮すること
  • リスクから、付加価値に変えること

QCD - R2V

興味深かったのが、社内の運用メンバーに対しての価値について話し合われたグループがあったことです。どうしても社内の運用メンバーのモチベーション維持は課題になります。クライアントの理想を実現するためには長期的な体制を維持できることが組織としては重要ですが、クライアンの姿勢を社内の運用メンバーにもきちんと伝播できる体制やしくみがあることもまた大切なことです。

  • 運用メンバーのモチベーション維持が課題
  • クライアントの姿勢や思いを、運用メンバーに伝播する体制やしくみが必要

運用業務の「安心・安全」をベースにする考え方に加えて、突き詰めていくと運用とは「誰がやっているか」によるものだという意見がありました。結局は、対応するのは人であり、クライアントと相談できる関係を築けるのもまた人ということになります。つまり、そうした優秀な人材をいかに増やしていくかということが大きな課題につながり、そこで大切なのは「教育」になります。

  • 運用業務とは「人」が関係することである
  • 優秀な人材を増やしていくために「教育」が必要となる

発表と講評

運用とは言わない

ボクが参加したグループでは、運用には、忍耐・飽きる・地味といったネガティブなイメージがあり、仕事内容は主に更新業務が多いためルーチンやマニュアル化を必要とするという意見がありました。一方で、クライアントの要望に応えようとするとすぐに提案を求められることが多いらしいです。提案とはつまり企画の提案だと思いますが、この企画を含むか含まないかで運用との線引きができそうです。運用費用と一口に言ってしまう場合には、企画を含まないことが多いようです。

運用」の対象とは Web などのプロダクトを指すことが多いと思いますが、この場合の「企画」とはいわゆるマーケティング企画に近い部分だと言えます。ただし、運用費用にはそのマーケティング企画費を含むことはないという矛盾があります。

そこで、「運用とは言わないほうがいいのではないか?」という話になりました。「運用」と言ってしまうことで、ネガティブなイメージがつきまとい、メンバーのモチベーションが上がりにくかったり、費用に含まれていないいろいろな相談をしたほうがよかったりするのであれば、いっそ「運用」と呼ばず「戦略」とかにしてしまえばいいのではないか。そうすると、そのために必要な体制も作りやすくメンバーの意識も違い、はじめからビジネス視点になりやすく、何のためにするのかという意思統一もしやすくなると思います。

運用」というのは受託側の表現で、クライアント自身にとってみればマーケティングにおけるひとつの業務に過ぎないと言うこともできます。

オープンな運用プラットフォーム

もう一つは、オムニチャネル時代において企業内の組織が縦割りから横断的になろうとしている変化に合わせて、受託側も企業を横断するような運用プラットフォームができないか、といった話がありました。たとえば、参加したグループでは皆 Backlog を使って管理をしていることが多いと聞きました。であれば Backlog を標準ツールにした運用スキームを各社が導入していれば、必然的に運用スキルや効率はあがると考えることもできます。

せっかく3社が集まっているということもあり、そうした運用スキームをオープンなプラットフォームで実現できないか、という話がありました。そのために必要なスキルを教育することや、運用のための検定試験なども考えれそうです。利権の問題があるかも知れませんが、そうした運用のためのプラットフォームを構築するという話はただの理想というより運用の未来像なのかも知れません。

坂本のまとめ

まとめ

クライアントから運用業務をアウトソースされるかされないかが、受託側の今後における課題だと考えています。これまで外部パートナーにアウトソースしていた企業でも、必要なスキルの人材を採用しインハウスで運用を開始する企業も増えてきました。

市場としてクライアントから必要とされるのは単価の安いスーパーマンでありリードしてくれる人、そんな人はいないわけなので、どうしてもチームで対応していく必要があります。ただそのチームとは、受託業者だけのチームではなく、ビジネスに貢献していくためクライアントといっしょになった戦略チームであるべきだと思います。

今回、第二回を実施して、第一回のときよりも参加者の積極性が増した印象を持ちました。ますます同じような業態どうしの課題共有には意義があるように感じます。第三回は IMJ で実施しようと考えていますので、ぜひご期待ください。

Web Creators Circle #2


Citizen Journey Mapping Workshop #OpenUM

2014年8月7日 (木)、渋谷のloftwork Labで「OpenCU 自治体サイトのサービスを考える - Citizen Journey Map ワークショップ」を開催しました。おかげさまで30人分のチケットを完売することができ、参加者も積極的だったため活気あふれるイベントになりました。

OpenUMワークショップ集合写真

参加者の中には、couldヤスヒサさんや「ユーザビリティエンジニアリング」著者の樽本さんStandard Inc鈴木さんなど、とても豪華な顔ぶれでした。

ワークショップ

ワークショップは、普段よく使う「Customer Journey Map」という言葉に対して、今回は一般市民という意味で「Citizen Journey Map」としましたが、文字通り行政サービス(自治体サイトなど)と一般市民とのやりとりを一連の流れで可視化することで、ペルソナの課題を見つめなおし、新しいソリューションを考えるという内容でした。

また、今回は横浜市広報課の方々にもご協力いただき、横浜市のサイトをワークショップの題材にさせていただくことに加え、顕在化している既存の課題(住民票や戸籍に関する問い合わせが多い点)をご紹介いただきました。

ペルソナとシナリオ

あらかじめペルソナとシナリオを用意していたため、各チームは個別で検討しコアな課題とそのソリューションに集中できる構成で進めることができました。講評には横浜市の方々にもお願いし、実際に取り組んでいる内容と現実とのギャップについてもお話いただきました。

ペルソナ

用意していたのは以下5体のペルソナで、住民票取得に関するシナリオを用意しました。

  • 山下さん (61歳・女) 体が不自由な旦那のかわりに住民票を取得し年金請求を行う
  • 高梨さん (32歳・女) 平日日中に住民票を取得しバイト先に提出する
  • 羽生さん (23歳・女) 引越しの手続きのため住民票を会社に提出する
  • 湯澤さん (32歳・男) パスポート取得のため戸籍謄本を取得する
  • リささん (26歳・女) 日本語で住民票を取得し教習所に提出する

ソリューション

事前にインタビューまでしてできたペルソナと仮説でいくつか作成したペルソナとがあり、情報の粒度がバラバラだった点は反省点ですが、これらのペルソナの課題を抽出して各チームからは次のようなソリューションを考えだしていただきました。

グループワーク

  • 委任状が必要なことに気付けない→バス停サイネージで注意喚起するサービス
  • 一度に全ての情報を取得したい→モバイル自動ガイダンスやFAQサービス
  • 手続き全体がわからない→手続きがまとめてわかり、次の手配を示すサービス
  • 目的の場所で受け取りたい→Web申請でパスポートセンターで受け取れるしくみ
  • 専門用語が多く翻訳がおかしい→運営者側の翻訳ガイドと統一化

そのなかで印象に残ったのは、行政サービスへの不満もそうですが、そもそもWebに対する不安や不信感がある方はサイトには訪れずに電話で済ませてしまっているという点です。そういう点でも Citizen Journey Map にしたことで、事前と事後における課題と感情を見つけることができました。

まとめ

個人的にまとめると、行政サービスに関して利用者の課題となる点は以下の3つ。いずれも行政以外のサービスでも同じようなことが言えるかと思います。

  • 専門用語が多い、漢字が多い、きちんと翻訳されていない
  • 手続きが断片的で、全体の流れ(ステップ)がわかりにくい、無駄に多い
  • 自治体サイトに訪れる以前にも問題がある(ネットへの不信感など)

また、Webサイトに情報量が多い点について横浜市広報課の方々からは、正確さを追求するあまり網羅性を求めてしまう傾向があるというお話をいただきました。必然的に、情報過多に陥ってしまう問題があるとのこと。これに対し、ペルソナ視点で見直した結果、ペルソナの行動からは全体最適よりも個別最適が求められます
つまり、シナリオに沿った流れを俯瞰して見ていくことで、行政手続きが最終目的ではなく、本来の目的は別にあるということがわかります。当たり前ですが、この前提をふまえて設計していくことがなによりも大切だといえます。

発表

最後に、Webサイト構築の視点では、サイト構造などはUMなどを使用して定型化し、目的に合わせたLP(ランディングページ)およびハブとなるページを見直すことで、それぞれの目的をスムーズに達成できる動線を計画することができます。また、次に向かうべき手続きや場所を指し示すことで、回遊施策を盛り込むことができます。

今後は、こうした課題解決の手段としてカタチをアウトプットしていくとともに、今回とは違う行政の方にもご参加いただきまた違った課題とテーマで開催ができればと思います。関係者の皆さん、お疲れさまでした。そしてありがとうございました。


UX Tokyo Jam 2014 #uxtokyo

UX Japan Forum 2014 #uxjapan に引き続き、7/26 (土) に UX Tokyo Jam 2014 #uxtokyo に参加してきました。東京開催で比較的大きなイベントでしたので、申し込みもすぐに完売したほどです。同僚が参加できなくなったため、急遽代理で参加することができました。

UX Tokyo Jam 2014

オープニング・キーノート

オープニング・キーノートは、UX Tokyo前田さんでテーマは「UX 0-1-100」という本イベントの構成にもなっているUXをいくつかの視点で分解するお話をしていただきました。

  • UX=0 社会をどうしたらいいのか (哲学・ビジョン)
  • UX=0→1 価値を創造するには (オリジナリティ)
  • UX=1→100 より大きなインパクトをうむには (スケーラビリティ)

そして「デジタルシフト」と「顧客側へのパワーシフト」についての背景を考察したうえで、UXデザインにおける設計対象が、単なるUIからカスタマージャーニー (ユーザー体験)、そしてビジネスシステムにシフトしている点を強調されました。

ビジネスシステム、つまりユーザー体験に対応する組織デザインをしていくためには、強力なリーダーシップやマネジメント力が求められるというメッセージは、経営層だけではなく細かい役割の中にも求められてくるように思いました。

UXデザインのためのマテリアリズム

以降は、パラレルセッションとなっているため参加した方しかメモれていないのですが、参加したのは「UXデザインのためのマテリアリズム」というタイトルで、編集者の江口さんとBEENOSの山本さんのトークショーでした。

マテリアリズム」とは唯物論(対義語は観念論/イデアリズム)のことで、このセッションではUXデザインを人間性から考えるのか、派生されたモノ (Webなど) ありきで考えるのかという話だったように思います。

たとえば Web は Google で検索すればすぐに答えが見つかるなど、答えに直結していたり、人間が生活をしていくうえで非常に合理的にできている反面、人間的な側面 (感情やゆとりなど) を置き去りにしているのではないか、といった問題提起が話の根底にあったと思います。

イタリア発の「Slow Web」という提唱は非常に人間的で、待ったなしのネット社会に反する生き方を指しているようでした。参考書籍として「ぼくはお金を使わずに生きることにした」を上げられていました。

また、UXデザインとしてとらえた場合、Web を作ることを前提に進めるのではなく、なにが必要なのかを見極めてから取り組むことで、結果 Web を作ることではなく QOL (Quality of Life) を満たす取り組みを目指すことのほうが大切だとお話もされていました。ボクの経験でも課題を見極めた結果、Web サイトの刷新は必要ない場合があると感じることが多々あるのでよく理解できました。

途中で変わる例として、江口さんからは「Moff – ウェアラブルなおもちゃ」の開発背景としても、当初想定していた親子のコミュニケーションを違ったカタチで実現したことをお話いただきました。このデバイスは SXSW 2013 のトレードショーでも人気だったと聞いています。

あと、個人的に興味を持ったのが「直観力」の話です。A/Bテストやデータ分析だけで判断するのではなく、そこには全体最適をとらえて考えることが重要だという話はだいぶ以前にも機械的か人間的かといった話題を聞いたことがあったのでその話とオーバーラップしました。ボク自身もこうした捉え方をする習慣を持つよう努めているところがあります。

また、その話とリンクするように「社会的意義があるか」という言葉もボクの耳には残りました。ただ、直観力を持つことと社会的意義がどうも交わらなかったので個人的には違和感がありました。この点は直接山本さんともメッセでやりとりさせていただきました。

UX Study としての Feasibility Study

次は、スタートアップとしてのUXとして、新明さんから「ココナラ」の開発背景をお話いただきました。2年前の立ち上げから現在に至るまでの流れをご紹介いただいたので、とても参考になりました。

ココナラ」とは、パーソナルな個人の相談ごとを、個人の知識・経験・スキルを低価格に提供して解決するマイクロサービスプラットフォームで、現在数万人の利用者がいるそうです。まさに、Two-Sided Marketplaces ということで、Buyer と Seller の両方を考えなければいけないビジネスモデルです。

UXデザインの3階層(サービスデザイン/アクティビティデザイン/インタラクションデザイン)で 取り組みを簡単にご説明いただき、サービスデザインを「事業の Feasibility Study」、アクティビティデザイン/インタラクションデザインを「UX の Feasibility Study」として、取り組まれた内容についてお話いただきました。

Seller や Buyer それぞれの仮説の検証方法をご説明いただき、ユーザー自身にカスタマージャーニーを作成してもらい感情曲線を書いてもらうなど、実際に取り組まれた方法をご紹介いただきました。その中で、UXタイムスパン (期間) を持ち出し、予期的 UX を満たすことの難しさと解決策として Vision ドリブンなメッセージを検討したという話も記憶に残りました。

最後に、音声入力や自分が会えないユーザーをターゲットに設定したことでの失敗談をお話いただきました。実際に取り組んだことをこれほど長時間にわたって解説していただいたことはなかったので、とても参考になりました。

UXから「生きたUX」へ

「ペルちゃん」こと大隈さんから「Act,Act, living present. (行動せよ、行動せよ、生ける現在に!)」という Henry Wadsworth Longfellow の言葉からはじまり、IDEO に学ぶ HX Prototype のお話をご紹介いただきました。そして「アウトプットのない学びは、鼻くそや~!」という彼の名言にあるとおり、このセッションでは課題をもとに実際にアウトプットをするグループワークショップを実施しました。

HX Prototype」とは、ヒューマンエクスペリエンス (人間体験) +プロトタイプ (試し、簡単な失敗) のワークショップだそうで、以下のお題をいただきました。

  • セブンイレブンのロゴを書いてください。
  • 来年、UX Tokyo として発信したいコトを書いてください。

ロゴはさすがに細部を覚えていなかったです。こんなに (なぞ) 見ているのに、人間の意識はまったくアテにならないことを痛感しました。

次は、来年自分が UX Tokyo で世界に向けて発信するとしたら何を発信するか、というテーマで各自で書いてまとめるワークをしました。自分が書いたものには、「日本文化」や「機械に負けない人間力」そして「デザイナーの向上」や「スキルアップ」などを書いたと思います。グループには、ゲーム開発に携わっている方から猫好きな方など、さまざまな意見が飛び交いました。最後にグループでは、そうしたさまざまな接点を持てる会にできるといいのでは、ということで「YATAI (屋台)」というのを発案しました。

今回このイベントに参加したのは、あくまで「UX」に引っかかる人たちなので、異業種や他業種、それこそ一般の人にも参加できる会にできるといいと考えました。そしてこのセッションにもあったように、参加する人が皆その場でアウトプットできる場としてグループごとに屋台を持ち、即席UXデザインではないですが、Fabcafe 屋台っぽいのがあると面白いという話に行き着きました。

思いのほか発熱したワークショップだったので、時間も押してしまい、ほかのグループの発表を聞けなかったのが本当に残念でした。

ほかのセッション

Empathy in UX Design

グリーの村越さんと元ロフトワークの水野さんで、モデレーターがコンセントの坂田くんというよく顔を合わせる方々のセッション。内容は聞けなかったのですが、各人の経験から実践に近い話をされたのではないかと思います。

Experience Design Out of Screen:これからのエクスペリンスデザイナーの生きる道

今年、会社を立ち上げたアトモスの児玉さんのセッション。IoT などプロダクトデザインのほうにも携わっていて、さまざまなことにチャレンジしている児玉さんとは懇親会でいろいろとお話できました。セッション中にライトニングトークも実施されたようで、村越さんも参加されたようです。

UX戦略を考えるための本質的ユーザー理解

インフォバーン井登さんのセッションは、ペルソナ開発について深堀りしたお話だったようで、こちらも聞きたかったセッションだっただけに聞けなかったのは本当に残念でした。そして懇親会でははじめてご挨拶することができ、同じ関西出身ということで今後なにかで一緒にできればと思いました。

クロージング・キーノート

最後は、コンセントの長谷川さんから「The Nature of UX」というタイトルで「UXの本質」についてお話されました。まず「UI/UX」表記は誤りである点を強調されました。

  • 「UX」を結果として捉えた場合、そのための手段として「UI」がある

電車の券売機を例に、使い方を補助するような張り紙は、UX観点で見た場合それほど気にならない、つまりUXで捉えた場合UIが及ぼす影響はそれほど大きくない点をお話されました。さらに、UX観点では目的地に向かうことであり、その手段として発券がある点をご説明いただきました。

参考書籍もいろいろとご紹介いただきました。

次に「時代が追いついた」テーマでは、米アップルの UX Architect Labo の設立背景から、米アマゾンのジェフベゾスCEOのインタビュー記事を紹介いただきました。「キンドル・ファイアがただのデバイスではなく、サービスだからです」 とCEOが言える時代。競争優位性の年表としても「製造の時代→流通の時代→情報の時代」と変わり、今は「顧客の時代」と言われているようです。

会社が失敗するのは、経営がまずかったからではなく、やるべきだと従来言われてきたことをきちんとやったからである」という従来からあるマーケティングの見直しと、グッズ・ドミナント・ロジックからサービス・ドミナント・ロジックへの変化についてもご説明いただきました。そうした時代の変化に合わせたビジネスシステムは、これまで別個に設けていたUX組織も、最近では事業にインクルードするカタチに変わってきたそうです。

  • UXデザイナが未来をつくる

このイベントの頭から参加していたことで、前田さんのオープニングキーノートの内容が再び頭に蘇りました。UIからユーザー体験、そしてビジネスモデルの変革に深く関与しているわたしたちは、これまでにない転機に差し掛かっている。そう考えれば考えるほど、長谷川さんの最後のスライド「UXデザイナが未来をつくる」は考え深いものがあります。

懇親会

その後の懇親会では、児玉さんや井登さんらと会話することができ充実した一日になりました。この写真は井登さんの「THETA」で撮影した写真です。

UX TOKYO Jam2014懇親会その2! #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA

長時間でしたが、今回このイベントに参加できたことで、いろいろな方のお考えをお聞きすることができ、また自分の中での考えをめぐらす機会に出会えたことをうれしく思います。ありがとうございました。そしてお疲れさまでした。

参加者や登壇者のコメントやブログもご覧ください。


UX Japan Forum 2014 #uxjapan

7月20日、名古屋で「UX Japan Forum 2014」が開催されました。前日の「UX Japan Community Meeting」から連日参加することになったわけですが、急遽平野さんのディスカッションに友情出演することになり、少しだけ自分の言葉でも話すことができました。

UX Japan Forum 2014

当日は4つのセッションで構成され、丸一日「UX」について考えるイベントになりました。

UX思考

キーノートは、山崎先生 (千葉工業大学) で「UX思考 – ユーザーエクスペリエンスの視点からイノベーションを生み出す」として、IBM での事例から書籍「ビジネスモデル・イノベーション」のご紹介まで、情報量も豊富でいろいろ勉強になりました。久しぶりにツイートもしました。

  • UX思考とは、ユーザーが体験をするもの (時間軸・環境軸・人間軸) を考慮し、トータルにデザインすること。
  • イノベーションの定義とは、持続可能な新しいオファリングを生み出すこと。
  • 組織のデザインとは、利益のモデル、ネットワーク (人のつながり)、組織構造、プロセスの4つのイノベーション・タイプが含まれる。この場合のデザインとは「組織のしくみ」をデザインすることである。
  • UXの戦略とは、UXのビジョン (未来) を描いて、実現化のためのロードマップを作ること。

また、書籍やブログのご紹介もあったため、後日振り返るのにも役に立ちそうです。

全国UXコミュニティミーティングでも出た課題「共感者が広がらない」「ビジネスに繋がらない」についても、ビジョン提案型デザインのアプローチでビジネス視点を考慮し、体験デザインおよび組織デザインを進めていくことで解決できるというお話でした。

そのほか「UX戦略」や「UX戦略の前に」といったお話がありましたが、個人的には「イノベーションタイプとデザイン」の表が印象深く、取り組みについて体系的にとらえることができるのではと感じました。

ユーザエクスペリエンス・デザインの破壊と再生

2つ目のセッションは「ユーザエクスペリエンス・デザインの破壊と再生」というタイトルで、UX Tokyo でも取り組まれているお二人(坂田くん山本くん)によるセッションでした。以前からよく彼らの記事を読んだりしていたのですが、山本くんと会うのは実ははじめてで前日の全国UXコミュニティミーティングが初顔合わせでした。

まず、坂田くんのほうはコンセプト策定から関わった某案件のケーススタディをご紹介いただきました。クライアントと一緒にWebサイトを作り上げていく過程で、役割の変化やこれから求められるデザイナーのスキルについてまとめられていました。

  • ユーザー駆動のサービスデザイン (人間中心設計/サービス・システムのデザイン)
  • デザインを導く立場としてのデザイナー (構想から実行へ)
  • サービス領域の拡張 (Web以外、ビジネス機会の創出)

一方、BEENOS の戦略ディレクターでもある山本くんのほうは、UX Tokyo の3つの方針 (哲学・ビジョン/オリジナリティ/スケーラビリティ) がそのまま今度の UX Tokyo Jam 2014 のプログラム構成になっている点をご説明いただき、BEENOS で最近取り組んでいる 110 日間の起業向けプログラム EIR (Entrepreneur In Residence) についてご紹介がありました。そうした経験から今後必要なキーワードを3つご紹介されました。

  • UX方針伝播のメカニズムの埋め込み
  • スキルアップ・新人教育
  • ビジネス成功事例の創出

キーノートで山崎さんがお話された「組織のデザイン」にも繋がる内容だったため、具体的な方法や取り組みの実例として自然に聞くことができました。

クライアントの向こう側

さて、3つ目のセッションは「クライアントの向こう側 – “見えないユーザー”との付き合い方」というタイトルで、平野さんが担当されました。内容は、某航空会社のケーススタディです。他社でも採用されたパネルデザインを皮切りに、まさにクライアントと共創した実例をご紹介いただきました。

  • 縦割りだった組織を横断で取り組めるようなワークショップを実施
  • 普段気づかない問題をインタビューなどで浮き彫りにして UI の随所に反映
  • 「共有と理解」を関係者の共通認識として徹底できた

それを受けて後半は、急遽わたしも参戦してのディスカッションです。受託からの視点になってしまいますが、経験則から言えることをお話ししました。

  • UXデザインは (受託者にとって) 提案の幅を拡げる、アイデアの最大化に貢献する
  • クライアントと一緒に作ることは、はじめから想定し、フォーマット準備やファシリテーションをする必要がある
  • MVP は二度必要になる (発注者のMVPを受託者はもう一度MVPにする必要がある)

とくに、「UX」という名でさまざまなインプットが膨大に増えてしまう結果、頭デッカチにならないよう「アウトプットに責任を持つこと」が求められると思います。結果、自分の手元 (業務) に還元できるサイクルにする努力をしないといけません。

UXと教育

最後のパネルディスカッションは「UXと教育」というテーマで、山崎先生 (千葉工業大学) と安武先生 (常葉大学)、そして河口先生 (トライデントコンピュータ専門学校) がパネラーとして参加。コーディネーターを浅野先生 (HCD-Net) が担当されました。

社会人や学生に向けた教育についてお話されていましたが、印象に残ったのは「手法に偏りすぎず、何のためにしているのかを見極めて、実体験を積むようにする」ということでした。社会人にもありがちな「手法を求める」という視点ではなく「課題を見つけて経験する」という視点が大切であるということです。

  • 手法に偏りすぎても問題、手法にこだわらないアプローチを最近施行している
  • ワークショップの重要性が再認識されている
  • 情報の等価交換が大切だ
  • 中堅社員の再教育が求められている

これも全国UXコミュニティミーティングでも話があった「すぐに手法を求める」「具体的な実例を求める」という参加者の声に対して「そういうことではないのではないか?」という回答にもつながります。また、教える側・教えられる側と一方通行ではなく、情報の等価交換という点も共通した課題にあがっていました。

リアルタイムドキュメンテーション (RTD)

今回のイベントでは、随時リアルタイムドキュメンテーション (RTD) という名で、安武先生 (常葉大学) の教え子たちで模造紙にサインペンでグラフィックレコーディングをされていた点も印象深い取り組みでした。

聞き手がメモをとり、書き手が下書きなしで描いていく行程は感動です。登壇する側にとっても、こうして聞き手の頭の中を整理して教えてもらえると、どこが伝わりづらかったのかがわかり、貴重な反省材料にもなります。

リアルタイムドキュメンテーション (RTD)

ほかの参加者のコメントやブログもご覧ください。

その後の懇親会では、前日参加されていなかった方々も加わり大勢でお話することができました。名古屋以外から来られた方もいらっしゃったので、自分たちの地域の活動や取り組むうえでの課題なども直接共有することができました。

途中で退席したため、その後は存じ上げませんが (汗)、丸一日「UX」をテーマにした会ならではの参加者どうしの懇親会になったのではないでしょうか。来年は札幌開催を予定しています。

ちなみに、前日の全国UXコミュニティミーティングの様子は「UX Japan Community Meeting #1」からお読みいただけます。